からだをいたわりなさい

からだをいたわる。

自身のからだをいたわる。

いたわるというのは、大切にすること、疲れていればねぎらうこと、慰めること、休養させることです。また、自身のからだをぞんざいに扱わないことでもあります。

心とからだは区別できませんから、自身の心もからだも、よくいたわりなさい、と理解してもよいでしょう。

『小学』には次の言葉があるそうです。

身は父母の遺体なり、父母の遺体を行うに、敢えて敬せざらんや。

「遺体」と聞くと、少し驚きますが、これは「遺(のこ)してくれたからだ」という意味です。

諸橋徹次氏は、この『小学』の言葉を次のように説明しています。

われわれのからだは父母の遺してくれたものである。だから、そのからだを取り扱うにあたっては、当然慎みをもってやらなければならない。

現代では、自身のからだをいたわりなさいというにしても、こういう教え方はしませんね。

自身というものが、個として考えられるからですね。生まれ出でたときから、一個の体(たい)と考えるからですね。

でも、父と母から受けた身であることに違いありません。

お父さんとお母さんから受けた身なのです。(自身の「知」によって、自身の「心情」を押さえつけないようにしてください。自身の「心情」をつかみ出してください。)

そうすると、「私」というものは、実は「私」だけのものではないことになります。

その父や母には、またその父や母からいただいたからだ、いのちがあります。

そうしてみると、「私」は確かに「私」なのですが、でも、そうではないのです。

この「私」のなかに、たくさんのいのちの連なりがあり、それを「私」は生きているのです。(でも簡単にいのちの連なりと思ってしまってはいけません。まず、父、母のからだと思うことです。)

私たちは、自身について傲慢にならず、「私のからだ」を傷つけず、いたわり、「私の心」をいたわり、「私」を大切にして生きなければなりません。

もっといたわらないと、と思うときは、自身を粗末に扱っているな、と思うときは、お母さんやお父さんのことを思い起こしてください。