幼児化は、怖い!

それは、50年ほど前のことだ。

テレビ時代に突入し、一億層白痴という言葉が出た。

そして、現在、ひょっとすると先の予言的言葉は、的中してしまったかもしれない。

テレビがそうしたというより、ある種の文化的偏向がそうさせてしまっていると思うが、テレビがその文化的偏向現象を増幅させる媒体として、大きな影響を与えてきたのは事実だろう。

ここでは、軟弱化し、幼児化する日本人ということで、林秀彦さんの文章を取り上げておこう。


 過去におけるどの時代の日本人でも、今よりずっとシタタカだったと思える。中国の文化を取り入れた奈良・平安前後の日本人から、江戸時代の町人でも武士でも、今の日本人よりずっと動的でアグレッシブな強さを持っていたに違いない。でなければ、明治のあの偉大な「変容」は成し遂げられなかったに違いない。それまでの日本人の中には、将棋指しのもつような棋譜が残っていたのである。敗戦後、我々はそれらの棋譜を全部燃やし、灰にしてしまった。その結果何が残っているかといえば、吐き気がするほどの日本人の「子供っぽさ」である。というより、白痴化である。世界中の歴史は成熟していく。よりセコくなり、複雑になっていく。日本人だけが、それに反比例するように、限りなく幼児化し、単純化していくのである。

ここでいう幼児化とは、もちろん国民全体のことである。
とすると、親たちがそうであり、小・中・高そして大学の教師たちがそうであり、裁判官もそうであり、弁護士もそうであり、研究者もそうであり、国家官僚も政治家もそうであり、・・・。

となれば、まことに恐ろしいことではないか。
また、
この幼児化に気づくこと自体が、すでに難しくなっているのかもしれない。