張りぼて人間

張りぼて」とは、「張子で作ったもの」のことをいう。
「張子」とは、「木型に紙を重ね貼り、乾いてから型を抜き取って作ったもの、あるいは、木・竹などを組んだ上に紙や布で貼って作ったもの」である。

さて、
ある知人が、「張りぼて人間が倒れたよ」、と言ってきた。

要するに次のような話である。
ここでは、倒れた者をM氏としておく。

知人は、Mを若いときからよく知っている。そして、結構近いところで働いている。
Mの周辺の者は、Mの若いときからのことを知らぬ者が多いので、Mのことを最もよく知るのはその知人ということになる。そのためもあってか、知人には、Mの振る舞いのおかしさに、よく気がつくようである。

そして、そのMが、(まだ中年らしいが)、脳梗塞で倒れたというのである。

若年での脳梗塞については時に聞く話はあるが、知人はMの不幸を皮肉っぽく言うのである。

彼はMを張りぼて人間なのだと言う。そして、そのために脳梗塞で倒れたと説明する。

Mとは、こういう人間らしい。
●たいして高い教養があるとも思えないのに、さもそれらしく振舞う。
●著名人の名前や話をよく口に出す。
●その意味が本当にわかっているのかどうか疑わしいカタカナ用語(要するに外国語)をよく使う。
●人が「ほ~・・・」と感心しそうな話を折に触れて出してくる。
●著名人と近しいかのような言い方をする。
●たいした経験をつんでいるわけでもないのに、さも経験をつんでいる者であるかのように言う。
●先生という言葉に弱い。自分が、「先生、先生」と言われると、大いに喜ぶ。
●先生と呼ばれるような者がそばにいると、人前ですぐにその先生を持ち上げる。
●さも偉そうに見えるように髭を生やしている。
●Mをよく知る知人の前では知人を立てながら、しかし自分が同等かそれ以上の者であるかのように振舞う。
●パイプをふかす。
●いかに自分がワイン通かと吹聴する。
●悟った者であるかのような誰もが納得するような話をするかと思うと、舌の根も乾かぬうちに寄らば大樹の陰的人間になる。
●さも学識がありそうで、難しそうな彼の話をよく聞いてみると、難しい言葉や著名人の名前や引用を出すが、中身がない。

まあ、知人もよっぽどMのことを不快な人物だ思っているのだろう、思いつくままに整理してみたが、上記のようなことらしい。それで、張りぼて人間だと言うのである。

要するに、表向きというか、表面は立派に見えるのだが、中身がないので、「張りぼて人間」なのだそうだ。

まあ、別の言葉を使うと、「ピーマン」でもよいのだろうか。

で、知人の解釈によると、自分をつくろって、つくろって、生きてきたので、相当無理があったのだろう、その結果、若いのに脳梗塞で倒れたのだろう、とのことなのだ。

なるほど、過労やストレスで、若くして脳梗塞になるというのもよく聞く話だが、こういう場合もあるのかもしれない。

知人の話を聞いた後、人の生き方について深く考えてしまったのだった。

そういえば、どこかで誰かが似たような話を書いていたと思う。探してみようかな。