子ども電話相談室のこと

夏になると、NHKのラジオ放送で「夏休み子ども電話相談室」がある。

毎年、時々ではあるが、車の中でこれを聞く。

この夏も、印象深い一つの質問があった。

それは、確か、次のようなものだった。

「蚊は、生きていてうれしいのでしょうか。」

この質問をしたのは、小学校の高学年の少年だったろう。

受付のアナウンサーは、少し笑っていた。その質問が、ほほえましく、また、面白くもあったのだろう。

回答者の先生は、蚊について説明していた。また、うれしいと思ったり感じたりすることについても答えていた。

私は、しかし、この質問のもう少し深い意味を考えていた。

いつも人の手によって、叩き潰される蚊のいのちについてだ。そして、そういういのちを生きていることについてだ。
それは、死といつも隣り合わせに生きているいのちとそれを生きている意味の問いだ。

私たちは、幼い頃から、ぼんやりとではあるが、そのような問いを抱き始める。
その感性が、考えへと至り始めるのは、はやい子では小学校の高学年くらいからである。

こうして人は、人生を考える人となっていく。いわば哲学者になっていく。

大人たちは、子ども(幼い人間)のそうした感性をあたたかく受けとめ、注意深く、正面から向き合ってやることが大切だ。

私は、相談室のこの応答を少々残念にも思い、その問いを出した少年の心に思いを馳せた。

この子どもの質問と回答が、この夏の印象に残る出来事の一つになった。