男と女の関係(うるおい)

乳繰り合うも多少の縁、なんて言葉があったような。

また、また、馬鹿だねえ、お前さんは。

それを言うなら、袖すり合うも他生の縁ってぇ、言うんだよ!
人の縁ってぇもんは、袖をすり合うような些細な出会いでも、大切にしなきゃあいけないって、ことなんだね、これは。

へえ、そうですかい。
おれは、乳繰り合うも多少の縁だとばかり思ってたよ!

おまえ、ひょっとして、たしょうってぇ字が、違ってやしないかい?

へえ?

他生の縁とはね、前世からの縁ってぇ、ことでね。ほかってぇ字に、生まれるってえ書くんだよ!

へえ、そうですかい。おれは、多かったり、少なかったりなのかと思ってた!

それにしても、乳繰り合うのも多少の縁、なんてぇいうのは、お前らしいねえ。
多少どころか、大いに縁ができるじゃないか。

いえ、いえ、乳繰り合って、そんなにたくさん縁ができてはまずい!

なぜなんだい?

かかあに、逃げられっちまう。

そりゃ、そうだ。
あんまり、縁がこくならない程度にやらないといけない。

まあ、しかし、なんだねえ。
乳繰り合うなんてぇいうのは、楽しいことだねえ。
人間世界、蓋を開けてみれば、あっちでも、こっちでも、乳繰り合っているのかもしれないねえ。
でも、今じゃあ、そういうおおらかな社会ってぇもんでは、なくなっちまったからねえ。

でも、やっぱり、乳繰り合いは楽しいにちげえはねえから・・・。

そうだねえ。
だから、おおらかでなく、乳繰り合ってるってえ感じかねえ。
あぶないねぇ。
まあ、しかし、乳繰り合うも他生の縁だなんて、深みにはまっちゃあ、いけないよ、くまさん!
女房、子供を泣かすんじゃないよ!

へぇ、だから、そのとおりで!
しかし、心配なのは、かかあの方でして。

おや、まあ、情けない。
精出して、上さんと乳繰り合ってやらなくっちゃぁ、いけないねえ!
男だって、女だって、やっぱりこれがなくっちゃあ、乾いっちまうんだからね!
乾ききる前に、潤いを持たせなきゃぁ、いけないよ!

で、どうやって!

馬鹿だねえ、そんなこたあ、考えずに、精出してやることをやればいいんだよ!