死と生と

「天意に従って生きている人は、死期が近づくとはっきりわかるのだそうだ。」・・・
・・・「俳聖松尾芭蕉も、病い癒えがたしと悟ってから、飲食(おんじき)を断って臨終を迎えている。昔の人は来世に旅立つ折は、積極的に食を断って身体を清めることが安らかな死につながることを知っていたらしい。」・・・「死神に追っかけられて、悲鳴をあげて逃げまわるのは情けない」・・・「どうせ一度は死と対面せねばならぬのなら、むしろ逃げまどわずにきちんと死を迎えよう」・・・「こちらの毅然とした態度に死神の方が逃げ出すくらいの強さをもって臨みたい」(山本廣史『野草処方集』)

「こちらの毅然とした態度に死神の方が逃げ出すくらいの強さをもって臨」む、というのは、死に臨むことではあるが、同時にそれは、毅然とした態度でもって生を生き、且つ生き切ることでもある。

著者山本氏は、「『天は人の死に際し、不必要な苦痛を与えることはない』ということを確信できた」と述べている。私もそう思う。山本氏は、医師である。