私を不自由にする私

趙州の前に出て一人の弟子が問答をしかけた。「私は何ですか」と尋ねた。師はやにわに弟子の胸ぐらをつかまえて「お前は誰だ。さあ言え、さあ言え」と迫った。ところが弟子は目を白黒させるのみであったのを見て「この糞馬鹿野郎」と言って彼は立ち去った・・
・・「何か」と尋ねた何かは、思い考える「何か」である。・・・私はという私はそもそも誰なのだ、そんな私を突き飛ばしてしまえ、自らの心身をくっつけ、握りしめて放つことができない虚姿、虚相にこだわっている・・・そんな私なんか捨ててしまえと言ったわけである。(福岡正信『無Ⅱ』)

しかし、「そんな私なんか捨ててしまえ」と言ったところで、こういう者は「捨てるとはどういうことか?」と、再び考えるので、「この糞馬鹿野郎!」なのである。