人は変わる

人は変わります。

しかし、「人は変わる」などという言い方は、ある意味のんきな表現だともいえます。

もっと真剣になれば、もっと真剣であるなら、そんな悠長なことは言っていられないかもしれません。

「私は変わる」と知るべきでしょう。

人は変容する。変容しなければ生き延びられない。四十歳のころは階段を昇ると息をきらしていたわたしが、奥穂高岳の山頂で、からだの芯から湧いてくる涙を流しっぱなしにしながら得た実感です。(南木佳士「変容する「わたし」」『からだのままに』)

これを、からだが変わったと浅薄に考えるべきではないでしょう。からだと心の区別のない「私」が変わったのです。

生きていることは変容そのものでありましょうが、風になびくような変容は別にして、上っ面の変容ではなく、芯からの変容というものがあります。

「私」の芯からの変容がある以上、より良く変容する方が良いに決まっています。そして、それを自ら為していくことができるのであれば、生きるうえで、それこそ大切なこととしなければならんでしょう。