人間と動物の違い

人間と動物の違いは、どういうところにあるのでしょうか。

私たち、多くの人は、人間には動物にない知性というものがあると学びました。
あるいは、人間は道具を生み出し、道具を使うが、動物はそれをしないと習いました。

しかし、昔の日本人は、そのようには学んでいないはずです。

孟子は、「人の禽獣に異なる所以の者は幾(ほとん)ど希(まれ)なり」と言っています。

つまり、人間と鳥や獣との違いはほんのわずかだと言うのです。

そして、人倫や道義心をもたない者は禽獣と同じだと考えます。

かつての日本人は、人間と禽獣(動物)との違いを、人倫の有る無しにあると学んだのです。

人間と動物とを如何に区別するかの、この考え方は、人間如何に生くべきかの視点、つまり「私」というものは人として如何に生くべきかという視点から出てきたものです。

そして、孟子は次のようにも言います。
「禽獣に於いて又何ぞ難ぜん。」

禽獣のような者を、本気になって非難する要はない。つまり、動物であれば、非難する対象にもならない、と言うのです。

それは、そのようなことをしていれば、「私」もまた、禽獣同様になってしまうからです。

物事を考える時、そこに「私」の「生」を取り去らずに置くと、まったく違った答が出てくるのです。

人間と動物の違いも、まったく異なった答になるのです。