一つの生き方

党派や派閥などといっさい縁がなく、ひっそりと人と世の中をながめていた。
少しシャイな話し方、しぐさ、他人へのいたわり、私的なことの領域に対するつつしみ。
細やかな神経が通っていて、しかもちっとも窮屈ではない。
いつものほほんとしている感じで、澄んだ空気のかたまりのようだ。
池内紀解説・早川良一郎『さみしいネコ』)

これは、早川良一郎さんへの池内紀さんの評である。

人に対する人の評というものは、実は、さまざまなものである。
しかし、ある人から、このように評されるということは、
つつましく、しかし、少し頑固に、自分を生きようとされ、
そして、そうした人なのだろう、と思えます。


会議というのは、いいものではない。中年、高年の同じようなサラリーマン面をしたのが、顔を合わせて、馬鹿らしいことを勿体ぶっていう。私はお愛想笑いをする。笑いが壁にぶつかって戻ってくる。会議に出るたびにそう思う。(『さみしいネコ』)

しかし、大抵の者は、自身の生活のなかで、いつもどこかでさめているものです。