無欲の欲を考える

無欲という言葉がある。

簡単にいうと、欲をなくせ、自身のうちにある欲を消せ、ということになるのだろう。

しかし、本当に自分の中にある欲をすべて消したらどうなるだろう。
いやいや、そんなことはできようがない。
それこそ死ねというようなものだ。

では、ここでいう無欲の欲とは何なのか。それは、私欲である。

人から喝采を浴びたい、たいした奴だと言われたい、賞賛を浴びたい、利益を得たい、名を上げたい、ほめられたい、格好良くありたい、よく思われたい、勝ちたい、注目を浴びたい、力のある人間になりたい、まあ、挙げればきりがないが、無欲の欲とはこうした私欲の欲なのである。

これらは、私欲というが、言ってみれば、「私」というものの比較的上っ面、表層にあるものである。

無欲というのは、そういう表層の欲をなくして、もっと根幹にある力を発現せよということなのだ。


無欲とは何も欲しないことではない。
無欲とは、精神が向上の一路を精進する純一無雑の状態をいう。
簡単に言ってしまえば、つまらないことに気を散らさないようにしろ、ということなのだ。
(cf.安岡正篤『運命を創る』)