壺中の天

小さな庭がある。

小さな庭には、少しばかりの花が、いつも咲いている。

そこにひらひらといろいろな蝶が来る。

みな、ひらひらとやって来て、そこここに遊んで、どこかへ去っていく。

こんな幸せなひとときがあるだろうか。

壺中の天とは、こういうものだ。


你(きみ)未だ此の花を看ざりし時、此の花と汝の心とは、同じく寂に帰せり。你来たりて此の花を看し時、則ち此の花の顔色は、一時に明白に起こり来る。便ち知る、此の花は你の心の外に在らざるを。(伝習録・岩中の花)