人生を軽んじるな

人生を安易に考えてはいけない。
自分の人生を安っぽくしてはいけない。

親に食わせてもらって育ってきて、その後は社会という親に食わせてもらって生きるなどという生き方に落ちぶれてはいけない。

生きるというのは、地道なものだ。

地道とは、地味、質素なこと、派手でないことである。そして、それは、真面目で、手堅く生きる態度である。

こつこつと生きること、着実に自身の足場を一つ一つ築き、踏み固め、その上にまた積み重ねながら生きることだ。

人には、人知れず築いたものというのがあるが、それを自身も知らないでいることも多い。

こつこつとやってきて築いたものが、どれほど大切なものであるかを自身で知らない者もいる。
ひょっとすると、大抵の者がそうなのかもしれない。

そういう者のなかには、時に、安易にそれを捨てて、垣間見た光物に飛び移ったりする。そういう者は、たいへんな苦労をして、後で自身が築いてきたものの大きさを知るのである。

しかし、大抵の世間の者は、地道に生きて築いてきたものの大切さを、知らずと言えども知っているのである。そのことこそ知らねばならない。

地道な生き方は、たゆまぬ歩みのなかにある。

人生を軽く考えてはいけない。
楽に生きられないのが人生なのである。
人生の妙は、そのなかにこそ見て取れるものである。

人生は、ときに浮き上がりそうな足を、しっかりと地につけ、その地を踏みつけ、これでもかと踏み固めて生きるくらいが良い。