生まれるもの

土に鍬を下ろすと、暗い穴が
ホッコリできて、
なかから虫がチョロチョロと逃げ出したり、
草の芽なんかが出てきてね。
これは今でもそうなんですが、
私、
なんでも暗いところから出てくると思っています。
フキノトウですとか、ワラビですとか、みんな土の下から、光を求めて出てきますよね。
工藤甲人「ボタン」『趣味の園芸』1993.5.)


この方は、イメージのことを、
心の底の闇から出てくる、と言っています。

明るいところからは生まれてこない。
闇から光を求めて出てくる。

そう言っています。


思うのですが、

生まれてくるものは、みんな、暗いところから出てくるのでしょう。

そして、良いものは、ほっこりとした、暗いところから出てくるのだろうと思います。

そのもっと奥底は冷たい闇といえる、もっと暗いところかもしれません。

そして、そこには、何かが生まれるずっと前のものがあるのでしょう。

でも、生まれてくるものは、ほっこりとした暗いところにいて、生まれるのを待っているのだろうと思います。
あるいは、そこで生まれていて、また、もっと深いところへ帰っていくものも、きっと多いに違いありません。

光の中に生まれ出たもの。
それもやがては暗いところへと帰っていきます。

光のなかで、より良く生きたものは、きっと、ほっこりとしたくらいところへ、ふたたび帰っていくのだろうと思います。

ほっこりとした暗いところ。
お母さんのおなかのなか。

そんなところなのかもしれません。