恩ということ

恩とは因を心に留めることなのだそうだ。

結果をもたらした原因をよく顧みることなのだそうだ。

今ここに生きている自分は、過去の結果であり、同時に未来の原因をつくっている。

未来は一寸先は闇でどう展開していくかわからない。

でも、今日まで生きてきた過去は確実に経験したことに違いない。

だから、その過去の恩を振り返り、生かされてきたことに深く感謝する。

そして、その恩に報いようとする。それが人の道なのだ。


これは、安田暎胤という方が言っておられることです。(『心の道しるべ』)


恩などと言うと、それこそ恩着せがましくておかしいと言う、知性に満ちた人がいるかもしれない。

しかし、人の恩がどうこうとあまり言わなくなった今日でも、

また、権利だとか、義務だとか、金を払っているのだから当然だとか、そういう人でも、

人との関係のなかで、

ありがとうございました、とか、お世話になりましたとか、そういう言葉を使ったり、そういう気持ちになったりするものだ。

そうした気持ちは、理屈なしに我々の中で自然に起こってくるものなのだ。

言ってみれば、これが恩を感じる気持ちなのだ。

人は、他人様に言われようが言われまいが、自分の心のなかで起こってくることを素直に受け入れなくてはいけない。そして、それを大切に思わなければいけない。


今年もあちらこちらで卒業式を迎えただろうが、仰げば尊しも、やはりほとんど歌われないのだろうなあ。