お父さんの言葉(宮本常一さんのお父さん)

気になる人の一人に、宮本常一(つねいち)さんという方がいる。

気になるというより、好きな人と言ってもいいのだけれど、
そこまで言うほどには、この方をよく知らないので・・・。

でも、この方は素敵な人にちがいないと、勝手に信じてる。
なぜって、
人の暮らしを、そのまましっかりと捉えようとした人のように思うから。

ご立派な研究者様たちが、いっぱいいろんな研究をしているようだけれど、
研究者でない普通の人に役立つような、地に根ざした本物の生き方や研究をした人じゃないかと思ったりするからなんだ。

まあ、そんな話は、いつか書くとして、
ここで書こうとしたのは、宮本さんのお父さんが言ったという言葉ね。

そのなかのいくつかを書き留めておこうと思ったんだ。

これは、常一さんが(おそらく14,5歳で)田舎の家を出るときに、父親が言った言葉のなかのいくつかだ。

●私はおまえを思うように勉強させてやることができない。だからおまえには何も注文しない。すきなようにやってくれ。しかし身体だけは大切にせよ。三十歳まではおまえを勘当したつもりでいる。しかし三十すぎたら親のあることを思い出せ。

●ただし、病気になったり、自分で解決のつかないようなことがあったら、郷里へ戻ってこい、親はいつでも待っている。

●自分でよいと思ったことはやってみよ。それで失敗したからといって、親は責めはしない。

●人の見のこしたものを見るようにせよ。そのなかにいつも大事なものがあるはずだ。あせることはない。自分のえらんだ道をしっかり歩いていくことだ。

父親からのこうした餞別の言葉を、書き留めておけと言われ、書き留めたらしいのだけど、
何とも、大したものだと思ってしまう。

口先だけの言葉ではなくて、親としてのいのちから出た、分かれる子供に対しての言葉のように思えるんですよね。


でもね、
今の時代のように、
お互い、精一杯生きているって実感がなければ、出てきにくい言葉だし、響かない言葉かもしれない。



話しは、それるけれど、
常一さんのお父さんは、どうも初等教育しか受けていない人らしい。
でも、こうした子供への言葉をみると、
教育というものが、なにが何でも重要かどうか、わからなくなってくる。
たぶん、大事なのは「学ぶ」ということなんでしょうね。