いのち(人間のいのちなんて?)

人間のいのちだからって、そうそう特別なものではないのかな。

ひょんなことで、あっという間に、いのちが消えてしまったりするものね。

そんなことを考えると、ほかの生き物たちと、ぜんぜん変わらないって思ったりするんだよな。

もうずっと前、少年のときに読んだ話で、志賀直哉の『城の崎にて』というのがあった。

粗筋の細かいところはもう忘れてしまったけれど、

なにげないような、そんな感じで投げた石で、イモリが死んでしまうんだ。
殺そうとしたわけでも、そんなことを考えていたわけでもなかったのに・・・。

そして、僕には、
そこのところだけ、
僕のこころのどこかしらないところになんだけど、
ちっちゃな石ころみたいに、ずーっとあるんだよ。

イモリは、自分が死ぬことを予感もしなかっただろう。
危険を察知することもなかったろう。
生きてたんだけど、なんだかよくわからないけど、死んじゃったって、そんな感じかもしれない。


人間にだって、そういうことはあるんだよね。

ひょんなことで死んじゃうってことがね。

ろうそくの火を吹き消すみたいにしてさ。
ろうそくの火が吹き消されるみたいにしてさ。

でもね。

そうは言ってもね。

いのちが、俺のいのちである限りはね、

やっぱり、そう簡単に逝っちゃてもらうのは、かなわないんだよな。

そんなに簡単に渡すわけには、いかないよ!