血の繋ぎ(つなぎ)

自分の生を考えると、そして、私の後ろを振り返ると、私の後ろには本当にたくさんの人がいます。

母がおり父がいます。

その父や母である、私の二人の祖母と二人の祖父、つまり4人の祖父母がいます。

そして、それらの祖父母の父と母がいましたので、私の8人の曽祖父・母がいて、その先には16人のおじいさん、おばあさんがいます。その先には32人いて、その先には64人いて、さらに128人いて、・・・。私は、それらの人たちの名前を知りません。

私の記憶には一人の祖父と一人の祖母しかありませんが、数えることのできない、たいへんな数の人が私の後ろに、間違いなくいたのです。そして、それぞれの人がそれぞれの人生を生き、私へと血をつないできたのです。

そのうちの一人がいなかったなら、今、私はいません。

私は、この血をつなぎ、次の人間をつくりました。
私をつくりだしてくれた血を、私は次につなぎました。

それぞれの者が、その命を大切に生きてほしいと思います。
そして、できるならということになりますが、その血を次につないでほしいと思います。

命をつなぐということだけを考えましたら、私はすでに一つの仕事を終えています。
もし、自分を、冬を前にして命を終えた生き物たちと同じように考えたなら、私はすでに彼らがなしたことはなしたといえます。

やがては私も、名もない一人の者となります。