パンツ収集家

パンツ収集家といっても、その方面の人は期待しないように!
期待しても、面白くないからね!
期待している人は、「なんだ、この話は!」と言って怒るといけないから、
読まないようにね!
(でも、たぶん、読むんだろうなあ、きっと。)

ある知人の話です。

彼は、とても硬い職についています。
そして、彼に与えられている仕事は、彼に向いていません。
だから、彼は、悩みを抱えていたのです。
でも、今は、けっこう楽しんでいます。そして、悩みも変わってきています。

彼は、中小企業やお客さんの家をまわる営業マンです。

彼の悩みは、お客さんをまわるのに、すごく緊張してしまうことです。
その緊張も、精神的なところでおさまっているならよいのですが、
彼の場合、腹にくるのです。それも下腹にくるのです。
大腸の方の調子が悪くなるのです。
そして、ウンコをちびってしまうのです。

(たいへんだ、たいへんだ、と思って仕事をしている、そこのあなた! こんな思いをして、日々仕事をしている人もいるのですから、自分の仕事は他の人の仕事よりつらいのだ、などと安易に思わないように!)

そのために、彼は、日々、幾枚もパンツをかばんに入れて、あるいは車に入れて、歩かなければならないのです。そして、ときどき、公園の便所やデパートやスーパーの便所、時には喫茶店の便所で、パンツを履き替えねばならないのです。

つらい話ではありませんか!

それを聞いた私は、たいへん気の毒に思い、彼を慰めようと思いましたが、慰める言葉がない。

そこで、冗談交じりで、こう言ったのです。

「しょっちゅう、便所へ行って、パンツをはきかえていては、いつも、自分を情けなく思うばかりだろうから、いっそ楽しみに変えてはどうか。」
「つまり、いろいろなパンツを用意して、はきかえる楽しみにしたらどうか。」

彼は、何をふざけたことを言っているんだ、とでも言いたげにその話を聞いたように思えましたが、その後しばらくして、彼に会うと、彼は元気そうにこう言いました。


「この前はありがとうございました。あれから、私はいろんなパンツを買って、けっこう楽しんでいます。」

「ブリーフやら、トランクスやら、ビキニやら、しかも、いろんな柄やいろんな色のを買って、今ではパンツをはきかえるのを楽しみにするくらいです。」


「ほう、それはいいですね。」


「でも、ちょっと、困ったことなんですけど、最近では、ふしぎにあまり下痢をすることがなくなってしまって・・・。はこうと思って楽しみにしていたパンツを、結局、はかずに持ち帰ることが多くなってしまったんです。」

私「・・・・・・・(勝手にしなされ!)」
(まあ、物事にはいろいろな発想転換があり、趣味もどういうところから生まれるかわからぬということでございましょうか。)