生きていて

「生きていてよかった」というような、通俗的な感慨の表現がどこかうさんくさく、気恥ずかしいのは、生きることの手ごたえはそんなひとことで言えるほど、やわなものでもうすっぺらなものでもないということを、私たちがちゃんと知っているからではないのでしょうか。ほんとの生はもっと無口で不気味だと私は思います。(谷川俊太郎「ひとり暮らし」)

しかし、「あの時、死んでいたら、この今はなかったな」という時は、大抵の人は経験するものです。生きているというのは、いつも結構どろどろしていて、難儀なことばかりなのです。