欲によって失うもの

強欲は良くない、とは誰しも知ることです。

しかし、自身の欲の大きさに気づかぬうちに、いつの間にかそういう人間になっていたりもするものです。

そういう場合は、手近な利得に心が奪われ、もっと大切なものを失うことになるでしょう。

「嗚呼、何のために私はこれまで生きてきたのだろう」などと嘆く時には、すでに手遅れかもしれません。

ただ、いのちを生きただけというのでは、人としてどうしようもないのです。

小さな私を、あくまで主体として生きていたのでは、そういうところも見えなくなってしまうのです。

大いなる私というものも、わからねばなりません。


何が何でも得だけしたがる強欲な者や、わずかな損害も蒙りたくないと怯える小心者は、利害得失を天秤にかける多面的な物の考え方ができないから、目先の利益に気を取られて、最後には大局的利益を失う。
(浅野『諸子百家』)