引退後と孤独

人は、利益を離れて自分以外のものに自分を捧げるという習慣がありませんと、引退後はただひたすら孤独に陥ることになります。(日野原重明『いのちを創る』)

孤独に陥るのは、なにも引退後に限ったことではありません。

自分以外のものに自分を捧げるというのは、自分とか自分を含めた者たちのことばかりを考えている生活では、できません。

捧げるという字は、奉という字から来ています。
いずれもささげてものを与える意味です。
捧げるには、仕えるという意味が少し乏しいかもしれません。両手で捧げ持って、さし上げるという意味です。

自分を捧げるとは、誰かのために、自分以外の人たちのために、自分をさし上げるということでしょう。つまり、この考え方が、孤独に陥ることから逃れる道になるということでしょうか。

しかし、それでもまだ問題といいますか、課題が残ります。

人のためにと言いつつ、そこに自利が働いているというものです。

自分以外のもの(人に限ることはありません)と自分とのつながりをよく知っているなら、孤独もなくなり、自身を働かせる範囲は極めて大きなものになるでしょう。