いのちの尊厳性

庭の片隅でげじげじを見た。

私は、持っていた移植鏝をそのからだに振り下ろした。

げじげじのからだは二つに裂かれ、なおも動いていた。

私は、その一層おぞましくなった姿を見まいとして、足でそれに土をかぶせた。

私は、あのような虫が生理的に嫌いなのだ。

いのちはみな尊いという。

果たして彼の虫のいのちは尊かったか?

私は、尊いいのちをあやめたか?

私は、かのもののいのちの尊厳性を奪ったか?