負けるが勝ち?

勝つためには、力が要る。

勝とうとすることは、他者より強くなろうとすることだ。
勝とうとすることは、他者を意のままに動かそうとすることだ。
勝とうとすることは、他者をコントロールしようとすることだ。
勝とうとすることは、他者を使う力を手にしようとすることだ。
勝とうとすることは、他者を自分の管理下に置こうとすることだ。
勝とうとすることは、他者を支配しようとすることだ。
勝とうとすることは、他者をねじ伏せようとすることだ。
勝とうとすることは、他者を自分より低く置こうとすることだ。
勝とうとすることは、自分を周りの者より高みに置こうとすることだ。
勝とうとすることは、周りの者を恐れさそうとすることだ。
勝とうとすることは、自分にひれ伏す者を見ようとすることだ。
勝とうとすることは、自分を崇める者を多くしようとすることだ。
勝とうとすることは、自分の力を誇示しようとすることだ。

勝つためには、力が要る。
人に勝つ者は、力がある。

しかし、
この者の力は、他者があってのものに過ぎないんだ。

私たちは、社会や他者との相互作用のうちに生きているには違いない。
いわば、
外の世界とのやり取りのうちに生きているには違いない。

だから、
この強くあろうとする者は、常に外の世界を意識するばかりなんだ。
外の世界のものに向けて、常に強くあろうとしているんだ。

しかし、
私たちは、自身の内にも世界をもっている。
まず、
このことを知っているというのは、幸いなことだ。
なぜなら、
内の世界こそ、本来のものにつながっているからなんだ。

実は、
この内なる世界のものに勝つことの方が、もっと難しいんだ。

他者に対して強くあろうとエネルギーを費やしている者は、
他者を支配しようとして、
その実、
その内なる世界のごく一部の力に、支配されている者なんだ。

内なる世界のものに勝つためには、力が要るんだ。
この力は、
外の世界のものに勝つ力と比べると、真の力といえるものだ。
そして、
この力を持つ者こそ、本当に力のある者なんだ。

内なる世界のものに勝つことの方が、私たちには大事だ。
なぜなら、
内なるものの深遠に本来のものがあり、
内なるものに勝つことによって、私たちはその本来のものに近づくからだ。


このことがわかっていない者は、気の毒だ。そして、愚かしい人だ。
この愚かな者の近くにいなければならない人は、本来のものへの道を失わされる恐れがあるので、十分にお気をつけなされよ!


勝人者有力、自勝者強。
老子、33章より)