臆病

臆病の臆という字は、肉月の偏に、意を旁とする字です。
その語義は、あれこれと心のなかで思うことで、胸がつかえる状態をいっています。
そして、そのために他のことに差し障るところが出てくる。従って、これが病であり、臆病といわれる状態となります。

あれこれと思うことでいっぱいになる、その思いに、ああなったらどうしようとか、こうなったらどうしようと、これから起こることを気に病むというのがあります。

どなたにも起こることですが、それで胸の内がいっぱいになると病となるわけです。
このような名づけは嫌であろうが、それは臆病の病といえます。

こういうときは、分かるわけのない先のことに、あれこれと思いを巡らせて、役に立たぬことをやっているのです。そうやって、大切なエネルギーを消耗しているのです。

やれやれ、情けないことをやっていると、
早いうちに気づいて、
きっぱりそういう自分とはおさらばすべきです。


将来の状況は変幻自在であり、これを分かろうとしても尽くすことはできない。
(吉田和男『現代に甦る陽明学』)